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中古工場・倉庫購入時の注意点とメンテナンス

2023年 RENOVATION

中古工場・倉庫購入時の注意点とメンテナンス

中古工場
 
工場や倉庫のような大規模施設を建設するには、多額のコストがかかることから、コスト削減を目的に中古物件の入手を検討する場合も少なくありません。しかし、事業用不動産売買物件の中でも、工場や倉庫の売り物件は、供給数が非常に少ない種目となります。また、売工場・売倉庫物件は、築浅物件が少なく、所有者が売却を検討した際に、建物を解体して更地として売却するケースも目立ちます。
 
なお、一定以上の規模を誇る工場や倉庫は、建物の造りがしっかりしていることから、築年数が多少経過していたとしても、購入後に改修工事をすることで問題なく利用できる場合が多いです。ただし、一般の方が物件を確認しただけでは、改修工事で直せる範囲の劣化なのかを判断することはなかなか難しいです。さらに、売り物件の中には違法建築状態に陥っている物件も少なくなく、中古物件の入手後にさまざまな問題が発覚して後悔するケースも珍しくないと言われています。違法建築物かどうかの見極めは非常に難しく、プロの不動産業者でも見落としてしまうこともありますので、中古の工場・倉庫の入手を検討した時には、不動産売買だけでなく工場・倉庫そのものに関する知識を持つ業者のアドバイスを受けるべきです。
 
工場や倉庫を新築するのではなく、中古で入手するという方法は、イニシャルコストを大幅に削減することができる、購入から使用できるようになるまでの期間を短縮できるなど、さまざまなメリットがあるのは確かですが、それは「状態の良い物件に出会うことができる」という条件が付きます。そこで当記事では、中古の工場・倉庫の購入を検討した時の注意点を解説します。

 

中古工場・倉庫購入時の確認ポイント

新規事業の立ち上げや事業拡大を目的として工場や倉庫の入手を検討した場合、「新築する」もしくは「中古物件を手に入れる」という方法が考えられます。新築の場合、用途に見合った建物を一から計画することができますが、時間やコストがかかるというデメリットが存在します。そのため、用途に見合う物件が見つかるのであれば「中古物件でも構わない」と考える事業者様は少なくありません。
 
中古工場・倉庫の購入を検討した時には、どのような点を確認しなければならないのでしょうか?ここでは、検討対象となる中古物件が見つかった時に確認したいポイントをいくつかご紹介します。
 

  • 立地に関する確認ポイント
    工場や倉庫の用途に適した立地なのか確認しなければいけません。例えば、騒音や臭いが発生する施設の場合、周辺環境をきちんとチェックしなければ、稼働後にクレーム対応などに苦心する可能性があるでしょう。この他、道路幅員、公共交通機関、インフラ(水道・電気・ガス)、ハザードマップなども確認しましょう。
  • 建物に関する確認ポイント
    違法建築物になっていないか、建物の耐久性に問題が生じていないかなどを確認しなければいけません。建物そのものについては、築年数や目に見える部分の状態だけでなく、過去の修繕履歴や構造部分(構造体の劣化)、前使用者の使用用途など、専門家のアドバイスを受けながら慎重に確認すべきです。
  • 法令制限に関する確認ポイント
    工場・倉庫の使用目的によっては、用途地域などもしっかりと確認しましょう。この他、建ぺい率・容積率、防火規制、地区計画などの法令制限については、しっかりとチェックしなければいけません。
  • 行政支援に関する確認ポイント
    自治体によっては、工場・倉庫の誘致に力を入れている場合があり、減税措置や融資制度など、物件の入手にかかる負担を軽減できる可能性があります。したがって、中古物件の購入前に、利用可能な制度がないか確認しておきましょう。

 
中古工場・倉庫の入手時は、上記のようなポイントを確認しなければいけません。特に、違反建築物でないか、購入後どのような改修工事が必要なのかと言ったポイントについては、物件購入後の事業運営に関わってきますので、慎重に確認する必要があります。
ただし、違法建築物や建物の本当の状態の見極めなどは、一般の方が判断することが難しい面もあります。例えば、違法建築物について、以下で詳しく解説します。

 

違法建築物の見極めは難しい

違法建築物とは、建築基準法の規定に適合していない建物のことを指しています。例えば、建ぺい率・容積率の超過、用途制限に違反している、接道義務違反などのほか、建築確認を取得せずに建物を建てている(増築や用途変更をした)など、法の規定に適合していない建物になっている場合、違法建築物になる可能性があります。
 
なお、建築物を建てた時点では、建築基準法に適合していたものの、後から法律が改正され、法に適合しなくなったという場合は、「既存不適格建築物※1」と呼ばれ、違法建築物とは分けて扱われます。日本国内で建築物を建てる時には、建築基準法に従わなければならないため、普通に考えると違法建築物になりようがないと考えてしまいますが、下図のように、世の中には違法建築物は数多く存在します。
 
違法建築物
 
画像引用:国土交通省資料より
 
上のグラフから分かるように、平成10年のデータでは、検査済証を取得する建物の方が少なく、なんと40%しかないという状況だったとされています。現在では、違法建築物はローンが組めないという致命的な問題がありますので、ほとんどの建物が検査済証を取得しています。しかし、築浅物件が少なく、築30年超の物件が当たり前にある中古工場・倉庫市場で考えれば、検査済証が未発行である可能性があると考えなければいけません。
 

 ※1 既存不適格物件
適法な建物として扱われますが、建て替えなどの際には、現行法規にあわせて違法している部分を是正しなければいけません。

 

違法建築物を見極めるポイントとは?

それでは、物件が「違法建築物なのか?」を見極めるには、どこを見れば良いのでしょうか?ここでは、間違って違法建築物を購入しないようにするための確認ポイントを紹介します。
 

  • 建築計画概要書・台帳証明書を確認
    建築計画概要書は、建築主が建築確認申請時に提出する書類のひとつで、建築主・工事施工者などの建築計画の概略が記載されています。また、台帳証明書は、確認済証や検査済証を受けたエビデンスとなる書類で、これらの有無を役所で確認すると良いでしょう。例えば「建築確認・検査済ともにあり」の場合、建築基準法に適合している証拠になり、増改築が無ければ違法建築物ではないという証明になります。その逆に、「建築確認なし」の場合は違法建築物と判断できます。なお、書類の保存期限は役所によって異なり、保存されていない場合もあります。
  • 建築計画概要書・登記簿などで面積をチェック
    建築物の面積が、指定の建ぺい率・容積率内に収まっているか確認しましょう。超過している場合、緩和規定を確認し、違法がないかをチェックします。
  • 建築確認図面と現状を比較
    建築確認申請時に役所に提出している図面と、実際の建物の状況が異なっているケースもあります。例えば、建築確認取得後に一部の敷地を売却し接道義務を満たさなくなった、建築確認内容と異なる増築を行ったなどのケースで違法建築物になっている場合が考えられます。

 
違法建築物かどうかは、上記のようなポイントを確認することで判断可能です。ただし、建築周りの法律知識がない方であれば、上の文章を読んでも「専門用語ばかりで意味が分からない…」と感じてしまうかもしれません。冒頭でもご紹介したように、購入を検討している物件が、建築基準法に適合した状態なのかを見極めるには、専門性の高い知識が必要になります。実際に、中古物件の売買を担当している不動産会社の人間でも、違法建築物については見落としてしまうケースが少なくないと言われています。
 
したがって、中古工場や中古倉庫の購入を検討した場合、間違った選択をしないためにも、プロの建設会社などのアドバイスを受けながら物件選びを進めるのがおすすめです。そもそも、中古の工場や倉庫を購入した場合、実際にそこで事業を稼働させる前に、建物の改修工事が必要になります。工場や倉庫の建設・改修実績が豊富な建設会社に相談すれば、物件選びに並行して「その物件を購入した時にはどういった改修工事が発生するのか?」これも総合的に確認してもらうことができますので、工場・倉庫の稼働までの工程がスムーズに進むはずです。

 

まとめ

今回は、中古の工場・倉庫を購入しようと考えた時の注意点について解説しました。工場や倉庫は、一般の戸建て住宅とは異なり、広い敷地と頑丈な建物、特殊な設備の設置が必要になることから、新しく建てる時には莫大なコストがかかってしまいます。そのため、用途に見合う中古物件が見つかった時には、新築ではなく中古物件を改修して利用するという決断をする事業者様も多いです。
 
ただし、記事内でご紹介したように、中古の工場や倉庫は、ある程度の築年数が経過していますので、「どの程度の改修で済むのか?」「そもそも違法建築物出ないのか?」という点は慎重に確認しなければいけません。物件の購入後に、改修工事では対処できないほどの劣化だと判明した場合、せっかく購入した物件を解体して、一から施設を建てなければならず、余計にコストがかかってしまう可能性もなくはないでしょう。また、違法建築物だと後から判明した場合も、急激な資産価値の低下が起きるなどの問題に発展します。
 
中古物件の状態や違法建築物かどうかは、建築士などの専門家が詳細な調査をしてみないと分からない部分もありますので、不動産会社などの仲介業者だけに頼るのではなく、建設会社などにアドバイザーとして参加してもらうのがおすすめです。

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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