少子高齢化や離職率の上昇などの影響を受け、日本国内のさまざまな業界で人手不足がますます深刻化しています。
特に、製造業や建設業ではその影響が顕著に表れていると言われており、製造現場で人材募集をかけても、必要な人材を確保することができないケースが目立っています。必要な人材の確保が出来なければ、今後の事業拡大が難しくなるだけでなく、最悪の場合「人材不足がこのまま進むと工場の未来はないのでは…」と頭を悩ませる方も多いでしょう。
それでは、製造業における慢性的な人手不足はなぜ起きているのでしょうか?当記事では、製造現場の採用が難しい理由や人手不足を解決するための対策製について解説します。
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製造現場における人手不足の現状
以下は、厚生労働省が公表している「ものづくり白書2023年度版」のデータです。
上のグラフから分かるように、製造業の就業者数は、2002年から2022年までの20年間でなんと158万人も減少しています。さらに注目すべきポイントは、製造業で深刻化する若者人材の不足です。
上のグラフの通り、製造業においては、2002年以降、若手人材の減少傾向が続いており、20年間で約130万人も減少しています。
また、厚生労働省が発表した一般職業紹介のデータによると、職業全体における有効求人倍率は1.22倍であるのに対し、生産工程に関わる職業における有効求人倍率は1.86倍となっています。さらに、生産工程に関わる職業について細かく分類すると「生産設備制御等(金属除く):2.32倍」「金属材料製造等 :2.98倍」「機械整備・修理の職業:4.09倍」など、2倍を優に超える求人倍率になっているなど、求人に対して人材不足が顕著になっていることがわかります。
それでは、製造現場での人手不足は、何が原因と考えられるのでしょうか?次項で、製造業界が抱える問題について解説します。
製造業に応募が来ない・採用が難しい理由とは?
ここでは、製造業界で人手不足が恒常化している代表的な要因をご紹介します。
労働環境のイメージが悪い
製造業界の仕事は、「きつい」「汚い」「危険」と言ったいわゆる『3K』を思い浮かべる方が多いです。例えば、油や化学薬品などの強いニオイの中で働く、重い荷物を運ぶ、着用する作業着が常に汚れているなどと言ったネガティブなイメージを持っている方は多いです。
また、工場の中には24時間稼働している施設も多く、深夜や土日など一般企業では休みの日でも勤務しなければならないといった印象を持たれているケースも多いでしょう。働き方改革やIT技術の普及が行われている中で、製造業界は「労働環境の改善が遅れている」などと言った負のイメージが根強く残っていることから、応募するのを躊躇する、そもそも製造業の求人は見ないという人も少なくありません。
給与が低い傾向がある
製造業が若手人材から敬遠される大きな理由の一つとして、年功序列の給与体系である企業が多く、とくに若手の給与が低いことがあげられます。例えば、りそなグループの公式サイト内で紹介されている業界別の平均初任給のデータを確認してみると、製造業の平均初任給は185,600円となっており、全業界の平均である196,300円を下回っています。
この初任給の安さが、若者人材から敬遠される大きな要因になっていると考えられます。
休暇を取りにくい傾向がある
製造業は、一度工場を止めると、再稼働に多額の費用がかかることもあり、お盆やゴールデンウィーク、年末年始などにまとめて休日が定められることが多いです。一般的に、土日祝日を含めたシフトによる勤務となっているため、自分の都合でまとまった休日をとりにくい傾向にあります。
他の業種と比較して、年間の休日が少ないというわけではないのですが、希望休が通りにくいなどの勤務形態は若者人材に敬遠される理由になるでしょう。
労働人口の減少
単純に日本の労働人口が減少していることも製造業界の人手不足に大きな影響を与えています。総務省が発表した「生産年齢人口の減少」によると、日本の労働人口は年々減り続けているとされています。
少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている(図表2-1-1-1)。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念される。
引用:総務省サイトより
労働人口の減少は、製造業界だけに影響を与えているわけではありませんが、製造業は上述したようなネガティブなイメージを持たれていることから、より深刻な影響を受けていると考えられます。
上記以外にも、製造業界における人手不足の要因はたくさん存在しますが、やはり「製造業は過酷な労働現場」といった漠然としたイメージが採用を難しくしている最も大きな要因と考えられます。次項で、この問題を解消するための対策などについて解説します。
製造業界の人材確保対策について
製造業界における慢性的な人手不足を解消するためには、どのような対策を行えば良いのでしょうか。ここでは、有効と考えられるいくつかの解決策をご紹介します。
負のイメージを脱却
製造業の人材確保対策として最も重要なポイントは、業界に対する負のイメージを改善することでしょう。
上述したように、製造業の仕事が敬遠されるのは、3Kのイメージが根強く残っていることが大きな要因であり、このイメージを払しょくすることができれば、自然と人が集まってくる可能性も高いです。
実際に、作業機械の導入や工場の臭気・騒音対策、清潔な休憩エリアの実現などにより、3Kから脱却している工場はたくさん存在します。また最近では、残業の削減など、働き方改革に着手する工場が増えており、いわゆる「ホワイト企業」と呼ばれる好待遇な企業として注目されている工場などもあるようです。
なお、工場の人材確保対策として「負のイメージの脱却」に着手する場合、改善した工場の内部を積極的に広めていくことも大切です。近年では、新しい人材の確保を目的に、VRを活用した工場見学など、工場のイメージアップを積極的に行う企業が増えています。
> TOSHIBA「事業所バーチャル見学」
> パナソニック「バーチャル工場見学」
工場の自働化
いわゆるスマートファクトリー化を進めるという対策です。
作業用ロボットや管理AIの導入など、デジタル技術を取り入れることで、人の作業負担を軽減することができ、さらに少人数でも仕事ができる環境を作ることができます。
機械や設備の導入により自動化が進めば、人手不足の解消だけでなく、工場の生産性向上や品質の安定化、コスト削減などさまざまなメリットが期待できます。過酷な環境下での作業を機械に任せ、安全な作業を人が行うようにできれば、今まで製造業界を敬遠していた人材の応募が増えるかもしれません。
今まで目を向けてこなかった人材の採用枠を増やす
社会全体で労働人口の減少が進んでいる現状では、今までは目を向けてこなかった人材について、採用の間口を広げることで人材不足の解消を目指すことができます。例えば、シニア世代や女性、外国人の採用は既にさまざまな業界で注目されています。
離職率を下げる
製造業界における人手不足解消を実現するためには、新たな人材を確保することだけを考えるのではなく、採用した人材の早期離職を防ぐことも大切です。離職率を下げるためには、労働環境の改善や待遇の改善などが有効です。
労働環境の改善については、機械・設備の導入による自動化を目指すことや、従業員が快適に働けるような作業環境を構築することが重要です。そして近年では、人手不足解消や物価高騰に対応する目的などで、製造業界でも賃上げをする企業が増加しています。
例えば、富士通では、国内全ての職層の社員を対象に、月額賃金を平均10%、最大で29%引き上げることを発表しています。この他、DMG森精機などでは、新卒採用において、初任給を大卒27万2210円→30万円、院卒36万3490円→47.5万円と、大幅に引き上げることを発表しています。最近では、年功序列制度を廃止し、「ジョブ型雇用」と呼ばれる新たな給与体系を採用する製造企業も増えているなど、待遇の改善による早期離職の防止の動きが活発になっています。
> 初任給上げラッシュについて
> 富士通の賃上げについて
製造業界における人材確保対策は、施設の改修を行い働きやすい環境を作るという対策や、従業員の待遇を改善するなどさまざまな対策が検討されています。もちろん、企業によって改善しなければならない部分は異なるので、自社が改善すべき問題が何なのかを見極めるところからスタートすれば良いのではないでしょうか。なお、経済産業省が公表した、実際の人手不足への対応事例のデータもありますので、以下の資料は是非確認しておきましょう。
参考:経済産業省「人手不足への対応事例」
まとめ
昨今、日本国内では、さまざまな業界で人手不足が深刻化していると言われています。これは、少子高齢化を始めとした労働人口の減少が大きな原因と言われています。しかし、製造業界での人手不足については、労働人口の減少のみが原因なのではなく、製造業界全体に根強く残っている負のイメージが大きな影響を与えていると考えられます。
工場などの製造現場で人手不足が慢性化すると、業務を万全に回すことができず、業務の縮小を余儀なくされるケースもあるでしょう。当然、業務を縮小するということは、企業の利益が減少して、最悪の場合は会社そのものが傾く原因となってしまいます。
技術を継承し会社を守るためには、若手人材の確保が急務と言えますので、自社の製造現場に存在する問題点を洗い出し、採用状況の見直しを急ぎましょう。
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者