工場や倉庫への鳥の侵入は、製造・保管中の製品に対する異物混入や衛生問題、設備の破損など、多岐にわたるリスクが生じます。特に、食品や医薬品を取り扱う工場や倉庫の場合は、厳格な衛生管理が求められるため、鳥が侵入しない、近づかない環境作りが重要です。
工場や倉庫などの大規模施設は、広い敷地面積が求められるため郊外に建てられているケースが多く、周囲には水辺や田畑が近くにあるという立地が多いです。そのため、鳥にとっては餌場に近い快適な住処となりやすく、工場・倉庫の安全かつ効率的な運営を維持するためには、鳥害対策が欠かせない取り組みとなります。
そこで当記事では、工場や倉庫への鳥の侵入を防ぐ基本的な鳥害対策を紹介します。
工場・倉庫で鳥害対策が必要な理由
工場や倉庫で鳥害対策が必要とされる理由は以下の通りです。
- 製品の品質低下、衛生面のリスク軽減
工場・倉庫にハトやスズメなどの鳥が住み着いた場合、フンや羽毛による問題が生じます。非常に軽い羽毛は、風の影響などを受け、施設内部に入り込む恐れがあり、製品への異物混入リスクが高くなります。万一、羽毛が混入し不良品が発生した時には、製造ラインの停止や製品回収、廃棄処理など、多額のコストがかかってしまい、企業の信頼も傷つけてしまいます。さらに、鳥の糞には、さまざまな病原菌や寄生虫が含まれているため、衛生面からも深刻なリスクとなります。 - 建物や設備の早期劣化
鳥の糞には、酸が含まれているため、金属で構成される設備や建物の金属部分に鳥の糞が付着すると、腐食の原因となります。工場や倉庫は、さまざまな場所に金属部品が採用されているため、鳥が住み着いて大量の糞が蓄積すると、設備・建物の維持コストが増加する要因になります。鳥の糞が原因で、金属屋根が腐食し、雨漏りに発展したという事例も報告されています。
上記のように、工場や倉庫にとって「鳥」は百害あって一利なしと言える存在です。したがって、上記のような鳥害を防止するには、鳥が近づかない、住み着かないようにするための対策が必要です。次項で、工場や倉庫の鳥害対策として有効な方法を紹介します。
工場・倉庫の鳥害対策6選
それでは、工場、倉庫の鳥害対策として有効な方法を解説します。なお、鳥害対策については、従業員が自ら行える簡単な方法と専門業者に依頼しなければならない本格的な方法があります。
自分たちでできる鳥害対策
まずは、少ない手間やコストで実践できる鳥害対策から紹介します。
鳥が嫌がるものを使って寄り付かないようにする
これは、夏場に虫よけスプレーを吹きかけて蚊に刺されるのを防ぐ、畑に案山子(かかし)を設置するなどと言った方法と一緒の考え方で、鳥が嫌がるものを設置することで工場や倉庫に近づかないようにするという対策です。
例えば、鳥が嫌がる光を発生させる装置、光を反射するテープ、風船などを設置したり、鳥が苦手とする超音波や特定の周波数を発生させる装置を設置するという方法があります。他にも、鳥が嫌う臭いのする液剤を散布するという方法も有名です。非常に簡単な対策で、一定の効果が見込めるのですが、光や音による対策は、鳥が慣れてしまうと効果が薄れる傾向にあります。
環境整備により鳥が寄り付かないようにする
光や音、液剤など、鳥が嫌がるような対策を施したとしても、工場・倉庫の敷地内にエサとなるものがあれば、それを目当てに鳥がやってきてしまいます。したがって、鳥害対策を考えた時には、工場や倉庫の周辺に、鳥のエサとなるものを置かないようにするという対策が大事です。屋外にゴミ箱などを設置する場合は、鳥のエサとならないよう、きちんとフタを閉じ匂いが発生しにくいタイプにして、ゴミ置き場周辺を常に清潔に保つようにしましょう。
また、水たまりは、鳥の水飲み場や水浴びの場になることがあり、これも敷地内に鳥を呼び寄せる要因となります。したがって、工場・倉庫内は、水たまりがなるべくできないように保ち、万一水たまりができた時は、すぐに清掃を行うようにしましょう。この他、鳥が巣を作りやすい場所をなくすなど、工場、倉庫内に鳥が侵入する理由を無くすという環境整備が鳥害対策として有効です。
工場・倉庫における鳥害対策は、上記のように自分たちで対策を施すことも大切です。特に、鳥が寄り付かないようにする環境整備については、害虫対策にもなるため、必ず行いましょう。なお、工場・倉庫の周辺に鳥の巣が作られてしまった時は、個人の判断で巣の撤去を行ってはいけません。鳥の巣を勝手に駆除すると、鳥獣保護法に違反してしまう可能性があるため、自治体などに必ず相談してから対応を決めましょう。
専門業者による鳥害対策
専門業者による鳥害対策は、鳥の侵入を防げるだけでなく、長期間にわたって鳥の被害を予防する効果が期待できます。自分たちで行う鳥害対策に限界を感じている場合は、専門業者に対策を依頼しましょう。
専門業者による対策は、以下のような方法があります。
防鳥ネットの設置
出入口・搬入口など開口部の鳥害対策では、防鳥ネットの設置が有効です。鳩は、工場や倉庫の内部に巣を作る事例も多く、入口からの侵入を防ぎたいところです。しかし、業務中の工場や倉庫の場合は、物や人の出入りが多いため、シャッターや扉を常時閉じておくことができないケースがあります。
防鳥ネットは、レール式でスムーズに開閉が可能なタイプもあり、目立たない色のネットや細い糸のネットを設置すれば、建物の美観を損ねることなく、入口からの鳥の侵入を防ぐことが可能です。防鳥ネットは、風通しを確保しながら鳥の侵入を防ぐことができるので、施設内部への鳥の侵入防止には非常に有効です。
大型ひさしは下部に防鳥ネットを設置
工場や倉庫では、屋根に大型のひさしが設けられているケースが多いです。大型のひさしを設置すれば、悪天候時でも雨に濡れずに作業が可能になり、商品や材料の置き場として活用することができます。しかし、この大型のひさしは、鳥の営巣場所となり、糞害により商品が汚染される被害が多く発生します。
工場や倉庫における大型ひさしの鳥害対策では、ひさしの下部に防鳥ネットを張ることで、鳥を侵入させず営巣を防ぐという方法が有効です。大型ひさしは、特に鳩の営巣場所として狙われるポイントになるため、ネットの設置により侵入できないようにする対策を検討しましょう。
防鳥スパイクで鳥の着地を防ぐ
防鳥スパイクの設置は、マンションなど、集合住宅での鳥害対策としても採用されています。ベランダのパラペット部に上向きの針を設置しているのを見かけたことがあると思います。工場や倉庫は、屋根の縁・パラペット・ひさし・排気ダクトなど、鳥が休憩のために着地しやすい場所がたくさんあります。
鳥が止まりやすい場所に防鳥スパイクを設置しておけば、突起により鳥が着地できなくなるため、寄り付きにくくなります。防鳥スパイクは、ホームセンターなどで手に入るため、危険がない場所であれば自分たちで設置することも可能です。しかし、屋根の上など、高所に設置する場合は、作業に危険を伴うため専門業者に依頼しましょう。
電気ショック装置を設置し危険な場所と思わせる
防鳥スパイクよりも効果的とされる対策が、電気ショック装置の設置です。これは、防鳥スパイクと同じく、鳥が着地する場所に設置する鳥害対策となります。防鳥スパイクは、突起により鳥が着地できなくするという方法なのですが、電気ショック装置は微弱な電気を流しておくことで、着地した鳥に刺激を与え「この場所は危険だ!」と認識させるという方法となります。群れで行動する鳥の場合、1〜2羽が電気ショックによる危険を察知すると、群れ全体にその危険性が伝わり近寄らなくなるとされています。さらに、電気ショックにより、その場所を危険と感じた鳥については、持続的な忌避効果が期待できるとされているため、非常に効果的な鳥害対策と言えます。
なお、鳥よけの電気ショック装置は、冬に静電気で「バチッ」となるような感覚に似た微弱な電流を間隔を空けて流す装置です。鳥にも人にも安全です。
まとめ
工場や倉庫にとって、鳥の侵入は決して無視することができないリスク要因です。鳥は、糞や羽毛などを敷地内にまき散らす存在となるため、製品への異物混入を始めとして、衛生問題や設備・建物の早期劣化など、企業の信用や利益を損なう原因となります。
記事内では、工場や倉庫に鳥を寄せ付けないための鳥害対策をご紹介しました。鳥害対策は、自分たちで可能な簡易的な方法もあるのですが、持続的な効果を見込みたい場合は、やはり専門業者に対策を依頼するのがおすすめです。一口に工場・倉庫の鳥害対策と言っても、施設の作りや周辺環境、取り扱う製品などによって、適切な対策は変わります。
工場や倉庫の鳥害対策にお悩みの事業者様は、ぜひ三和建設にお気軽にお問い合わせください。また、鳥害対策をご検討の方は、メンテナンスを兼ねて工場・倉庫の外構と外装の維持保全項目チェックリストもご確認ください。
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者