工場や倉庫の屋根は、その大きさや構造の複雑さから修理や工事には専門知識が必要です。日頃のメンテナンスはもちろんの事、老朽化や劣化によるトラブルが発生した場合、迅速な対処が必要となります。
そして、屋根修理の方法はさまざまです。屋根表面の塗装のやり替え、屋根材そのものを交換する葺き替え工事、そして既存屋根の上から新たな屋根材を葺いていくカバー工法などが有名です。中でも、カバー工法は、工場や倉庫の稼働に大きな影響を与えることなく、屋根の機能を取り戻すことができる工法です。
当記事では、工場・倉庫の屋根(材)の種類および、屋根工事の中でも、カバー工法を選ぶことのメリットとデメリット、さらに大まかな費用感をご紹介します。屋根の大きさや構造の複雑さによって費用感は異なりますが、ある程度の相場を事前に知っておくことで、屋根の劣化時に迅速に対応できます。
Contents
工場・倉庫の屋根の種類
カバー工法を説明する前に、工場・倉庫の屋根の種類について説明します。
工場・倉庫の屋根の種類は、主に以下の3つです。
・波形スレート
・瓦棒葺き屋根
・折板屋根
波形スレート
波形スレートは、セメントと繊維を混合して波形状に成形した屋根材です。比較的低コストで入手できる素材であり、耐久性、耐火性、遮音性に優れています。
瓦棒葺き屋根
瓦棒葺き屋根は、ガルバリウム鋼板やトタンなどの金属屋根材を用いる屋根です。耐久性と耐腐食性に優れた金属素材です。軽量で接続部が少ないため、雨漏りのリスクが抑えられ、緩やかな傾斜の屋根に適用されることが多いです。
折板屋根
折板屋根は、金属素材の板を折り曲げ加工して作られる屋根材を使用します。軽量でありながら高い強度を持ち、非常に耐久性があります。波形のデザインにより、強風の影響を受けにくく、耐風圧性と排水性にも優れています。
以下の記事では、工場や倉庫の屋根材ごとのメリットとデメリットについて詳しく説明しています。
工場・倉庫の屋根材の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説
カバー工法のメリット・デメリット
屋根のカバー工法とは、今ある屋根の上に新たな屋根材を重ねて葺いていく屋根工事を指しています。屋根の葺き替え工事と比較した場合、既存の屋根材を撤去する工程が不要になるうえ、撤去した古い屋根材を処分する必要もなくなるため、工事にかかる費用を抑えることができます。さらに、カバー工法が完了した後の屋根は、二重屋根の状態になり、屋根部分の断熱性や防水性、防音性能の向上も期待できます。
さらに、2004年以前に製造された波型スレートを屋根に採用している工場や倉庫の場合、アスベストを飛散させることなく屋根工事が可能という点も大きなメリットとされています。ここでは、工場や倉庫の屋根工事について、カバー工法を選択したときのメリットとデメリットを紹介します。
カバー工法のメリット
まずは、工場や倉庫の屋根について、カバー工法でメンテナンスを行う場合のメリットです。カバー工法には以下のようなメリットがあります。
- コストをおさえて屋根を新しくできる
- 葺き替え工事と比較すると工期が短い
- 工場や倉庫を稼働したまま工事ができる
- アスベスト含有の屋根材でも、アスベストを飛散させることなく工事ができる
カバー工法の大きなメリットは、既存屋根を撤去せずに、そのまま工事を進めることができますので、短工期・低コストでメンテナンスができるという点です。さらに、屋根工事期間中でも、工場や倉庫の稼働を止める必要が無いので、事業に影響を与えることもありません。
この他、カバー工法の場合、屋根が二重になることから、防音性や断熱性、防水性など、屋根そのものの機能が向上することも大きなメリットです。
カバー工法のデメリット
一方、カバー工法による屋根メンテナンスは、以下のようなデメリットが指摘されています。
- 屋根が重くなるので、耐震性に劣る
- 以後の修理やリフォームが高額になる
- 屋根の状態を戻す工事にはなり得ない
カバー工法は、「既存の屋根を残した状態で、その上から新しい屋根材を葺いていく」という工法です。つまり、2種類の屋根材が設置されることになり、屋根総重量が増し、建物にかかる重量負担が大きくなり地震の影響を受けやすくなると言われています。
カバー工法後の修理費についても、屋根が二重になっているため、雨漏りが発生した際にその原因の調査や修理作業も複雑になり、通常の屋根よりもコストがかかります。
そして、カバー工法最大のデメリットは、「屋根を完全にリフレッシュさせる工事ではない」という点です。上述しているように、カバー工法は、古い屋根をそのままに新たな屋根材を重ねて設置します。つまり、屋根下地などは、古いものをそのまま再利用することになるということです。そのため、屋根下地の劣化が想像以上に進んでいる状態でカバー工法を行った場合、新たな屋根材の耐用年数未満で葺き替え工事が必要になり、結果的に屋根工事にかかるコストが増えます。必ず工場や倉庫の屋根修理を得意とする専門家に相談しながら進めましょう。
屋根カバー工法にかかる費用相場
工場や倉庫の屋根工事において、カバー工法が選ばれる理由は、葺き替え工事などと比較すると、短工期、低コストで屋根機能を取り戻すことができるからです。それでは、実際に屋根のカバー工法を行う場合、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?ここでは、屋根カバー工法の工事項目と大まかな費用相場をご紹介します。
カバー工法の内訳
- 仮設足場工事(工事に必要な設備費用)
- コンパネ・野地板など(※下地が劣化している場合は必要)
- 新しい屋根材の設置費設置費
- 軒先板金仕舞費用
- 各部雨仕舞板金仕舞費用
上記とは別に、工事管理費・諸経費が加算されます。屋根カバー工法にかかる費用については、新たな屋根材に何を選ぶのかによって、工事総額が変わります。上で紹介したように、屋根カバー工法の弱点は、二重屋根になることで屋根重量が増し耐震性に悪影響を与えるという点です。したがって、カバー工法に採用される屋根材は、軽量な金属屋根素材を使用するのが基本です。
工場や倉庫の屋根工事で、カバー工法を行う場合の費用相場は「5,000〜15,000円/㎡」が一般的です。なお、以前、別の記事でその他の屋根工事を行う場合の費用相場もご紹介しています。ぜひ以下の記事もご参照ください。
関連記事:倉庫リフォームの費用相場を改修を行う部分別にご紹介
工事費をおさえるには小規模工務店が良いか?
工場や倉庫の屋根工事は、建物のメンテナンスの中でも比較的規模が大きい工事となりますので、工事にかかる費用も高くなります。もちろん、建物を良い状態で保つためには必ず行わなければならないのですが、可能な限り工事にかかるコストをおさえたいと考えるのが普通です。それでは、工場や倉庫の屋根カバー工法について、工事にかかるコストをおさえるにはどうすれば良いのでしょうか?
一般的に、こういった建物のメンテナンスに関わる工事は、依頼する建設会社の規模が大きくなるほど高い見積りが出てくるというイメージを持っていると思います。しかし実は、工場や倉庫など、建物の規模が大きい施設の屋根工事の場合、小規模工務店よりも三和建設のような一定以上の規模を持つゼネコンの方が安くなる場合があります。
三和建設には長年培った経験とスキルがあり、施主様の要望を踏まえたうえで、より安くその要望を実現できる工事計画を提案することが可能です。さらに、大規模な工事を中心に請け負っていることから、資材メーカー様との取引量が多く、資材の調達能力が高くなるので、屋根工事に必要になる資材を安価に仕入れることができる点も大きな要因です。こういった理由から、工場や倉庫の屋根工事にかかるコストは、工事を依頼する会社の規模と見積り金額が単純に比例するようなことはありません。
特に、工場や倉庫での工事は、「なるべく営業を止めることなく工事を行う」ための工事計画が何よりも重要になります。したがって、そのための事前検証と工事計画が立てられる経験を持つ企業に依頼すべきです。
参考:常に安いほうがいいのか?改修工事費用の本当の違いは見積もり記載の工事内容にあり
まとめ
工場や倉庫の屋根は、事業を進めるための機械・設備、お客様の大切な商品、働く従業員を守るためにも、常に万全な状態を保たなければならない場所です。屋根のメンテナンスを怠り雨漏りが発生した場合には、工場の稼働を停止させたり、保管商品が水濡れしてしまう、従業員の転倒や感電事故の可能性があるなど、さまざまな問題が発生するリスクが生じます。
もちろん、屋根のメンテナンス手段にもさまざまな方法がありますが、その中でもカバー工法によるメンテナンスは、低コスト・短工期で行えるうえ、工場・倉庫の稼働を止める必要が無いなど、さまざまなメリットが考えられますが、早く安価に済むからと選らんでしまうのも危険です。
三和建設では、工事・倉庫の建設・改修ご依頼の際、丁寧なヒアリングと詳しい工事内容の説明を行います。また、その情報を基にしっかりとした調査を行い、より正確な見積もりと工事計画をご提案いたします。現在、屋根のメンテナンスをご検討中の方はぜひ三和建設へお問い合わせください。
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者