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工場・倉庫の屋根材の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説

2022年 RENOVATION

工場・倉庫の屋根材の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説

 

今回は、工場や倉庫などの大規模施設で用いられる屋根材の種類と、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。 工場や倉庫などにとって、屋根は紫外線や風雨の影響が建物内部にまで侵入しないようにするという重要な役割を持っています。また、施設内ではさまざまな機械・設備が稼働していますし、そういった機械から生じる大きな音が、外に漏れていかないようにするという役割もあります。工場や倉庫では、どういった屋根材が採用されているのでしょうか?
ここでは、施設規模が大きな工場や倉庫で用いられることが多い代表的な屋根材の種類とそれぞれの特徴を解説していきます。

工場・倉庫の代表的な屋根材について

工場や倉庫など、大規模施設の屋根によく採用される屋根の種類についてご紹介していきましょう。戸建住宅でも、多種多様な屋根材があるように、工場や倉庫の屋根にもいくつかの種類が存在しています。

以下に、代表的な屋根材の種類とそれぞれの特徴を簡単に解説しておきます。

 

波板スレート

まずは波板スレートと呼ばれる屋根材です。この屋根材は、セメントと繊維を混ぜて作られた屋根材で、その名称通り波を打つような形状に成形された屋根材になります。素材的には、戸建て住宅でもよく採用されている化粧スレートと呼ばれる屋根材と同じものです。

波板スレートは、波打っている山の大きさによって『大波スレート』と『小波スレート』に分類することができます。現在では、大波スレートが屋根や外壁材として併用されていますが、小波スレートに関しては外壁材専用として利用されています。ただ、築年数が古い建物では、屋根にも小波スレートが採用されているケースも多いです。

屋根材としての波板スレートのメリットは、高い耐久性・断熱性・遮音性・耐火性を持っていることです。屋根材のメリット・デメリットは後述します。

 

注意

2004年以前に製造された波板スレートは、そのほとんどにアスベストが含まれている点に注意しましょう。波板スレートに使われているアスベストは、発じん性アスベスト飛散危険度レベル3に指定されているなど、国が指定する危険レベルでは最も安全性が高いレベルとなっています。これは、屋根材が破損しない限りアスベストが飛散することはないというレベルです。ただ、屋根の葺き替え工事などで、既存屋根を解体する場合、特別教育を受け防塵マスクを設置した作業員による湿式作業での解体、産業廃棄物としての処分が必要になります。

発じん性アスベスト飛散危険度レベルについて

折板屋根

近年、工場や倉庫の屋根として主流になってきているのが折板屋根です。折板屋根は、金属をジグザグに折り曲げている屋根材です。金属は、折り曲げることにより強度を増しますので、このような特徴的な形状になっています。

折板屋根は、非常に軽量な金属素材が採用されていることから、広い屋根に施工することが可能で、工場や倉庫の他、体育館のような大規模施設の屋根に採用されるようになっています。また、折板屋根の折板は、梁や母屋に直接屋根材を葺くことができるため野地板がいらず、工期の短縮が可能です。さらに、強風地帯においても強靭性を発揮する、雨仕舞にも高い性能を期待できるなどと言うメリットから、工場・倉庫などの事業用施設で人気になっているのでしょう。
工場・倉庫では、上記の波板スレート、折板屋根が代表的なものと考えてください。これ以外にも、狭小地の戸建て住宅の屋根としても近年人気になっている『陸屋根(りくやね・ろくやね)』などもありますが、これは屋根材と言うより形状の問題なのでここでは省きます。

波板スレートのメリットとデメリット

それではここからは、それぞれの屋根材のメリットとデメリットを簡単にご紹介していきたいと思います。まずは、工場や倉庫で古くから採用されている波板スレートのメリット・デメリットをご紹介します。

波板スレートのメリット

近年では、工場や倉庫などの事業用施設でも美観を意識されることが増えているため、意匠性に優れている折板屋根を採用するケースが増えていると言われています。ただし、古くから工場や倉庫などで採用されている波板スレートにもさまざまなメリットが存在します。

  • 優れた耐久性を持っている 波板スレートの耐用年数は25年以上と、優れた耐久性を持っている点は大きなメリットです。そこまで小まめなメンテナンスも必要とせず、長期間使用できる点が最大の強みと言われています。注意が必要なのは、スレート材そのものは非常に強いのですが、固定のために使用されるボルトなどはサビてしまうので、そういった点のメンテナンスが必要です。
  • 優れた耐火性を持っている 波板スレートは、法定不燃材料であり、他の材料との組合せによりますが、各種防火・耐火構造に認定される点もメリットです。
  • 遮音性に優れている 波板スレートは、そこまで分厚い屋根材ではないのですが、屋根部分からの音漏れが非常に少なくなるという遮音性の高さがメリットです。もちろん、外からの音の侵入も防いでくれますので、「雨音がうるさく感じる…」といった金属系屋根材にあるデメリットを気にしなくて良い点がメリットです。
  • コスト面も有利 上記のような性能を備えている割に、建材として比較的安価な部類と言う点もメリットと言われることが多いです。強風でモノが衝突して屋根材にひび割れがあった際などでも、建材が安価なことから気軽に交換によるメンテナンスが可能です。他にも、波板スレートを同じ波板スレートで張り替えた場合、一括損金で処理することができるなど、税制面での優遇もあります。

波板スレートのデメリット

上記のようなメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在しますので、以下の点はおさえておきましょう。
 

  • 汚れやすい 波板スレートは、金属屋根のように表面がツルツルしていないことから、砂埃や土埃が付着しやすく汚れやすいという点がデメリットです。砂埃や土埃によって汚れたとしても、屋根材そのものが劣化や腐食するわけではないことから、汚れが放置されてしまうケースが多く、建物の美観が壊されてしまうことになります。建物の見た目は、企業イメージを左右する場合がありますので、美観維持のためのメンテナンスが必要になる点がデメリットです。
  • アスベスト問題 2004年より前に製造された波板スレートには、アスベストが含有されている可能性が非常に高いため、葺き替え工事などを検討した時に、廃材の処理費や撤去費が高額になってしまいます。2004年以降は、アスベストが使用されていませんし、このデメリットは気にしなくても構いません。

折板屋根のメリットとデメリット

それでは次に、折板屋根を採用した場合のメリットとデメリットも見ていきましょう。折板屋根は、金属板を折り曲げて強度を増している屋根材になります。素材的には、ガルバリウム鋼板が最も主流で、カラーステンレスやフッ素鋼鈑などが採用されるケースもあります。

それでは、折板屋根にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

折板屋根のメリット

まずはメリット面からみていきましょう。

  • 耐久性が高い 折板屋根は、ジグザグに折りたたんでいることから、真っすぐな金属板と比較すると強度が高くなります。そのため、軽量な屋根にも関わらず、しっかりとした強度を持つ屋根に仕上がる点がメリットです。また、ガルバリウム鋼板は、金属なのにサビにも強いという特徴を持ちますので、何十年も使える耐久性の高い屋根が実現します。
  • 低コストで施工できる 折板屋根は、低コストで施工できるという点も非常に大きなメリットです。一般的に、屋根を葺く場合には、野地板やルーフィングといった下地を作っていく必要があります。しかし、折板屋根は、下地を作る必要が無く、梁などに直接金具で取り付けることができます。この特徴から、工期が短くなり、施工費も低コストですみます。
  • 水はけが良い 折板屋根は、金属板を波型に成形しているという特徴があります。そして、波型にすることで水はけが良い仕組みになることから、耐水性に優れた屋根になるという点がメリットです。

折板屋根のデメリット

最後に、折板屋根のデメリット面もご紹介しておきます。

  • 断熱性、遮熱性が低い 折板屋根は、他の屋根と異なり、屋根裏と言う空気層が無く、ガルバリウム鋼板などの屋根材1枚で屋根を構成しています。そのため、外の冷気や熱気の影響を受けやすくなってしまいますので、空調効率が悪くなります。
  • 遮音性が低い 折板屋根に限らず、金属屋根全般の弱点といわれるのが、遮音性が低いという点です。特に、折板屋根の場合、金属板一枚で屋根が構成されるわけですので、雨音なども室内に響いてしまうことになります。何の対策も無ければ、大雨の日などは、会話も困難になるほどうるさく感じることもあります。
  • サビる 折板屋根は、非常にサビに強いと言われるガルバリウム鋼板が採用されることが多いです。ただし、金属なのに間違いはないので、絶対にサビないわけではありません。特に、折板屋根はボルトで固定されるのですが、固定用のボルトがサビてしまうことで、そこから貰いサビしてしまうことで、屋根材そのものにサビが広がってしまうことがあります。サビを放置してしまうと、いずれ穴が開いてしまい、雨漏りなどの危険があります。

まとめ

今回は、工場や倉庫など、施設規模が大きい建物で採用される屋根材の種類とそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介してきました。

この記事でご紹介したように、工場や倉庫では、波板スレートや折板屋根と呼ばれる屋根材が採用されるケースが多く、どちらも耐久性や耐火性に優れているという点は共通しています。ただし、屋根材の素材が全く異なることから、注意すべきデメリットはかなり違いますので、その点は頭に入れておきましょう。

なお、2004年よりも前に建てられた工場や倉庫で、波板スレートが採用されている場合は、屋根材にアスベストが含まれている可能性があります。その場合は、修繕よりも葺き替えによりアスベストを排除する必要がありますので、早めにご相談ください。

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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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