今回は、工場や倉庫など、様々な商品を製造・保管する施設での雨漏りトラブルとその対策についてご紹介します。
一般住宅では、雨漏りが住宅トラブルの大半を占めていると言われており、日常生活に支障が出てしまうことから、雨漏りを発見すればできるだけ早く修理しようと考えるものです。しかし、工場や倉庫などで発生する雨漏りに関しては、そこで生活するわけでもないことから、作業に直接的な被害が生じていない場合、雨漏りへの対策が後回しにされがちです。工場や倉庫などの施設では、生産性向上のためや労働環境改善を目的とした設備投資など、さまざまな面にコストがかかってしまうことから、建物自体の小さな劣化や不具合が放置されてしまうことが多いようです。
しかし、製品や高額な設備が存在する施設で、こういった対応をしてしまうと、思いもよらない大きな損害につながってしまう危険があります。そこでこの記事では、工場や倉庫で雨漏りが発生した場合に考えられる被害や、どういった事が原因で雨漏りにつながるのかについてご紹介します。
Contents
雨漏りを放置した場合のリスクとは?
それではまず、工場や倉庫などで雨漏りが発生した場合に、その対処を後回しにしてしまう事のリスクからご紹介していきましょう。工場や倉庫などの施設内には、様々な商品や高額な設備がたくさん存在します。また、多くの従業員が施設内で働いていることから、雨漏りの放置が非常に甚大な被害につながってしまう危険があると言えます。
ここでは、工場や倉庫で雨漏りを発見した場合に、その対処を後回しにしたときに考えられる代表的なリスクについてご紹介します。
工場・倉庫内の製品が廃棄になる…
工場や倉庫内で雨漏りが発生した場合の代表的な被害と言えば、製造または保管していた顧客の製品が水に濡れてしまう…という問題です。
どのような製品だとしても、一度水に濡れてしまえば、その商品価値は大きく低下してしまうことになり、莫大な損失となってしまいます。工場や倉庫などであれば、大量の製品が施設内に積み上げられており、雨漏りを発見できたとしても、すぐに移動させることも難しく、目の前で商品が被害にあっていく事を、指をくわえてみているしかできない…といった可能性もあるでしょう。
近年では、台風の大型化や局地的な集中豪雨が頻発していますが、こういった自然災害時には、小さな被害から一気に大きな雨漏りにまで発展してしまうケースも非常に多いです。したがって、こういった被害を防ぐためにも、普段から建物の点検を行い、小さな劣化のうちに修繕する事が重要です。
工場・倉庫の設備が故障する…
工場や倉庫などの施設では、さまざまな高額な機械・設備が稼働しています。したがって、雨漏りが発生してしまうと、これらが濡れることで故障してしまう危険があります。精密な機械であれば、一度の濡れで使えなくなってしまうことも考えられますし、そうなれば大きな被害につながってしまうことでしょう。特に、工場などで製造設備が故障してしまうと、製造ラインがストップしてしまうことになり、その被害は甚大なものになってしまいます。
こういった機械・設備は、非常に重量のある物も多いので、雨漏りを発見したとしてもすぐに移動させることができない場合が多いです。工場や倉庫で発生する雨漏りは、機械・設備の入れ替えに多額のコストがかかることや、事業自体を停止せざるを得ないことから、自社の信用を大きく損なってしまうリスクもあると考えましょう。
火災リスクや雨漏れ箇所が増えるリスクが考えられる…
雨漏りは、天井から水が落ちてくる…など、目に見える症状が確認できない場合も多いです。例えば、屋根裏に水が広がり、そこを通る電気配線などが水濡れでショートしてしまう…などと言った被害も多いわけです。
実は、こういった目に見えない雨漏り被害も非常に恐ろしいものです。例えば、屋根裏の漏電によって電気の遮断が何度も発生してしまい、製造ラインが正常に稼働できなくなり、納期遅れが生じてしまうなどというリスクが考えられます。
さらに恐ろしいのは、電気設備がショートしてしまうことで、火災が発生してしまう、従業員が漏電箇所に触れてしまい、感電事故が起こってしまうなど、人命にかかわる事故に発展しかねない問題になります。また、雨漏れを放置しておくといわゆる水路がつくられていき雨量によっては新たな水路を作る事になっていき、対策や修繕に困難を有していきます。工場や倉庫での雨漏りは、施設だけの問題ではなく、そこで働く人を危険にさらすものだと考えなければいけません。
工場や倉庫で考えられる雨漏り原因と日常点検について
工場や倉庫で雨漏りが発生した場合、一般住宅とは比較にならないほどの被害に発展してしまいます。それでは、こういった雨漏り被害を防ぐためには、どういった点に注意すべきなのでしょうか?
ここでは、工場や倉庫などの大規模施設における代表的な雨漏り原因と、普段からチェックしておきたいポイントをご紹介します。
屋根材を固定するボルト周りの劣化
工場や倉庫などの大規模施設では、折板屋根や波形スレートなどと呼ばれる屋根が採用されています。こういった屋根は、屋根材の固定のため、ボルトが使用されているのですが、経年劣化によりボルトに錆が発生することで、徐々に緩んでしまうという症状が考えられます。ボルトが緩んでしまうと、ボルト穴に隙間が生じてしまい、そこから雨水の侵入を許してしまいます。また、錆びによりボルトが肥大化してしまうと、波型スレートにひび割れが生じ雨漏りの原因になることも考えられます。
どのような建物の屋根でも同じですが、常に紫外線や風雨の影響を受け続ける場所ですので、想像している以上に劣化スピードが速いと考えておきましょう。したがって、定期的に屋根の点検を行い、ボルト錆や緩みをチェックし、小さな劣化のうちに修理しましょう。
屋根材自体の老朽化
築年数が経過した工場や倉庫では、屋根材自体の老朽化を放置していることが原因で雨漏りが発生してしまうというケースもあります。例えば、屋根表面に施工されている塗装の効果が切れてしまっているのに、それを放置してしまっている…という施設は非常に多く見受けられます。 屋根塗装の効果が切れてしまうと、表面にカビやコケが繁殖してしまうことがあり、それにより屋根材のひび割れなどの損傷が見えなくなってしまうことが考えられます。こういった屋根材の破損は、雨漏り原因になるだけでなく、台風などの自然災害時には、一気に被害が拡大してしまい、屋根が崩壊してしまうといった大きな被害も考えられます。 どのような屋根材を利用していたとしても、耐用年数というものがあり、いずれ葺き替え工事などの大規模修繕が必要になると考えておきましょう。雨漏りさせずに屋根を長持ちさせるためには、最適なタイミングで必要なメンテナンスを行うことが重要ですので、定期的な専門業者による点検を行いましょう。
コーキング部分の劣化
コーキングとは建築物の気密性や防水性の向上のために、シリコンやウレタンなどの樹脂で隙間を埋める作業のことをいいます。工場や倉庫の屋根に換気扇や窓がある場合、その隙間をコーキングしています。
コーキングも経年劣化がおこるため、ひびが入ったり、崩れてしまうことがあり、雨漏りの原因となります。コーキングの劣化は見つけにくいため、こちらも専門業者による定期点検が重要になります。
雨漏りは屋根だけの問題ではない
「雨漏り=屋根の劣化」と考える方が多いのですが、実は外壁やコーキングなどの劣化が原因となるものもあります。例えば、窓枠やドア枠、換気扇などに生じる隙間には、防水処理を目的としてコーキングが施工されています。しかし、こういったコーキングは、紫外線などの影響で徐々に劣化してしまい、ひび割れや脱落がおきてしまいます。防水のために施工されるコーキングが劣化してしまうと、そこから水の侵入を許してしまうことになりますので、当然、雨漏りを引き起こしてしまいます。
一般的に、外壁や窓枠などに施工されるコーキング、外壁塗装は約10年程度に一度の頻度で打ち替えが必要です。したがって、屋根だけでなく、外壁など、建物周り全てに関して、定期的な点検を行い、必要なメンテナンスを行うようにしましょう。
まとめ
今回は、工場や倉庫での雨漏りに関して、どういった不具合が原因で引き起こされているのかをご紹介してきました。工場や倉庫などで雨漏りが発生した場合、商品が水濡れで被害をこうむり、施設内で使用している機械・設備が故障してしまうなど、非常に甚大な被害につながる危険があります。
工場や倉庫などは、施設の規模が大きいことから、日常的に建物の点検を自分たちで行うことは非常に難しいものです。したがって、定期的に専門業者に依頼し、点検とメンテナンスを行っていくのがオススメです。
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
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施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者