資材価格の上昇や円安の進行により、建設費も高騰を続けています。さらに、2024年4月からは、建設業界でも長時間勤務をはじめとした、常態化した労働環境問題の解決を目的に「時間外労働の上限規制」が適用されます。
これは物流業界だけでなく、建設業界にも大きな影響を与えると言われています。実際に、物価上昇に対する賃上げ措置も相まって、人件費の上昇は避けられない状況になっています。
それでは、工場や倉庫の設備投資、増改築を計画している事業者様は、昨今の建設費上昇を考えた場合、実行はしばらく待った方が良いのでしょうか?
いいえ、建設費が下がる見込みがないため、基本的には早期実施が最も費用を抑えられると考えられます。
2020年以降、新型コロナウイルス問題やウクライナ危機を始めとした世界情勢の不安定化の影響もあり、建設資材のひっ迫や納期遅延などの問題が発生し、設備投資や増改築の計画を一時的にストップしている企業があります。さらには、建設費の急上昇という問題が浮上し、計画をさらに延期したほうが良いのではないかと考える企業も多いようです。
そこで当記事では、建築費の上昇はどれほどのものなのか、工場、倉庫の設備投資・増改築を早期に行うべき理由について解説します。
Contents
建設関連の物価は急上昇している
それでは、建設関連の物価動向についていくつかのデータをご紹介します。ここでは、一般社団法人建設物価調査会が公表している建設資材物価指数および建築費指数をもとに解説します。
建設資材物価指数について
建設資材物価指数は、建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を表すものです。この数値では、電気代やガスなどの燃料費、機械賃貸や機械修理といったサービス費が除外されているため、「建設工事に使用される直接資材の物価変動の観察や分析、また、建設工事における直接使用資材のコスト変動の分析などに利用することができる」とされています。
以下は、2015年の数値を100とした価格の推移を示したグラフとなっています。
引用:建設物価調査会webサイトより
上のグラフから分かるように、コロナ禍以前は、大きな変動はなく101〜105を推移していたものの、2021年以降は急激な上昇を見せています。直近となる2024年4月の建設総合では、135.8となっており、昨年より高止まりが続いています。
建築費の上昇も続いている
次は建築費についてです。実は、建設資材価格だけでなく、建築費も上昇が続いています。
引用:建設物価調査会資料より
上のグラフから分かるように、建築費もコロナ禍以前と以後では状況が一変しています。コロナ禍以前は、105付近を推移していたものが、コロナ禍以後となる2021年から急上昇ははじめ、直近では工事原価で130.7(暫定)、純工事費で131.5(暫定)と、どちらも30%以上(基準:2015年を100)の上昇率となっています。
今後、建築費が下落するのか?
工場や倉庫の設備投資や増改築に関わる建築費や建築資材の価格は急激に高騰しており、現状は「高止まり」の状況になっています。そのため、工場・倉庫を運営する事業者様の中には、設備投資や施設の改修の必要性は感じながら「建築費が下落するまで待った方が良いのではないか?」という判断をしているかもしれません。
しかし、建設業界でも2024年問題の影響や政府による賃上げ要求がなされていることから、今後も設備投資や施設の修繕・改修に関わる物価は下落することはないと予想されています。
政府が建設業に5%の賃上げを要求
令和6年3月8日に、総理大臣官邸で建設業団体と政府による賃上げなどに関する意見交換会が行われています。
この会合では、政府が建設業界に対して「5%を上回る賃上げ」の協力を要請したとされています。なお、この賃上げ要求については、あくまでも「協力要請」ですので、強制力はありません。しかし、政府側は、2024年3月から「労務費の引き上げ」を実施しており、公共事業の労務単価が「前年比5.9%引き上げ」と言う措置がとられていることから、業界全体として賃上げが進むのではないかという予測も出ています。
引用:国土交通省資料より
建設業界の賃上げは、人件費に価格転嫁されることとなるため、当然建築費の上昇に影響を与えると考えられます。
建設業界における2024年問題の影響
2024年問題については、「物流の」という言葉が付されて紹介されることが多いため、20運送会社などの物流企業に関係する問題なのだととらえている方も多いです。しかし、2024年問題は、物流関連の企業だけでなく、建設業界にも非常に大きな影響を与えます。
建設業界の2024年問題については、以下の2点が大きなポイントとなります。
- 割増賃金引上げ(2023年4月から)
中小企業における60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が25%から50%へと引き上げられるというものです。大企業は2010年から50%の割増賃金が適用されていたのですが、2023年4月以降は、企業の規模に関係なく月の時間外労働が60時間を超える場合、50%の割増賃金を支払う必要があります。 - 時間外労働の上限が規制される(2024年4月から)
2024年4月以降は、建設業でも時間外労働時間に罰則付きで上限が設けられました。
建設業界では、もともと深刻な人手不足や高齢化が問題となっています。時間外労働に上限規制が設けられた場合は、さらに人手不足が加速すると考えられます。そのため、建設業の企業では、新たな人材の確保をするためにも、今までよりも待遇を良くする必要があり、これが人件費の高騰につながります。その結果、建築費のさらなる上昇は、避けられないと予想されています。
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まとめ
今回は、建設周りの物価上昇について解説しました。記事内でご紹介したように、建設資材の価格や建築費は、コロナ禍以前と以後で比較すると、驚くほどの上昇傾向を見せています。コロナ禍真っ最中は、ウクライナ危機などの世界情勢の不安定化も重なり、建設資材のひっ迫や納期遅延などが問題視されました。実際に、これらの問題により、設備投資や施設の修繕工事などを控えている工場・倉庫は多いはずです。
そして、ここにきて建築費の急激な上昇という問題により、設備投資や増改築修繕をさらに先延ばしにした方が良いのではないかと考える事業者様が増えています。
しかし、政府による賃上げ要求や、建設業界の2024年問題への対応の必要性を考えると、今後、現在の建築費が急激に下がるようなことはなく、さらなる上昇もあり得ると予想できるため、今後の建築費の動向を考えると、工場や倉庫の設備投資、修繕などは、早めに実施することが最もコストを抑えられます。
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者