工場は利益を生み出すための施設で、生産性を上げるために稼働率を向上させることが非常に重要な要素です。しかし、工場の稼働率向上に一役買えるはずのメンテナンスの床の塗装(塗床)工事は意外に見落とされがちです。実際に以下のような問題を放置している工場は多いのではないでしょうか?
- 工場の床塗装が剥がれて、塗装片が床に落ちている
- 工場の床に凸凹ができていて危ない場所がある
- 床に塗られていたラインが消えてしまい、通路に道具がはみ出すようになっている
工場の床塗装(塗床)が劣化した場合には、塗装メンテナンスを検討する場合が多いのですが、作業の邪魔になるほどの問題にはならないため、その必要性は感じながらも放置されてしまうことは珍しくありません。しかし、製造工場や食品工場では、わずかな塵やゴミが製品の品質を大きく左右する原因となることを忘れてはいけません。どのような製造現場でも、製品への異物混入に細心の注意を払っているはずですが、床の塗装(塗床)工事を怠っていれば、その他の異物混入対策が意味をなさないものになる恐れがあります。
そこでこの記事では、適切な工場床の塗装(塗床)工事を行うことのメリットをご紹介します。
Contents
床の塗装(塗床)工事の必要性
建物の塗装工事と言えば、屋根や外壁の塗装工事をイメージする方が多く、屋根や外壁の汚れや錆びにより建物の美観が損なわれることを嫌って行うものだと考えていることでしょう。一方、床の塗装剥がれに関しては、施設の美観維持にはあまり関係のない部分ですし、劣化に気付いたとしてもその対処を遅らせてしまう施設が多いようです。
しかし、工場の塗床は、建物の美観維持などとは別に、「ほこりや塵が舞い上がるのを防ぐ」という非常に重要な目的を持っています。工場や倉庫などの大規模施設の床は、コンクリートが用いられていることから非常に頑丈そうに見えます。しかし、コンクリートは固いもので引っ掻いたりすると、意外と簡単に粉塵が舞ってしまうという弱点を持っています。
つまり、さまざまな製品を製造する施設で極微細な塵が異物混入の原因となる製造現場では、床の耐摩耗性と密着性を得るために床面に塗装を施し、作業中に粉塵が舞い上がることを防いでいます。もちろん、床面に採用する塗料にもさまざまな種類が存在しますが、コンクリート床に塗装を施すこと自体に「粉塵が舞い上がることを防ぐ」という効果があることから、工場での塗装(塗床)工事は『防塵対策』という目的があります。
さらに、床の塗装劣化は、以下のような問題を引き起こす恐れがあるため必要だと考えられています。
- 従業員の安全性が低下する
塗装剥がれが生じている床は、劣化しやすく、凹凸やひび割れの原因となってしまいます。床面の凹凸やひび割れを放置してしまうと、従業員がつまずいて転倒するなど、思わぬ事故に発展してしまう恐れがあるでしょう。 - 作業効率が落ちて生産性が低下する
施設内の安全性が低下すると、足元を気にしながら作業を行うことになるため、作業効率が低下してしまいます。また、工場などの製造施設では、通路や製品置き場、機械設置場所などを整理するためにラインが引かれていますが、これが消えてしまうと整理整頓が行き届かなくなり、人の邪魔をし、作業や清掃に余計に時間がかかってしまうようになります。適切な塗装(塗床)工事は、こういった無駄を削減できることから、作業効率を向上させ、生産性を維持するためにも必要です。
工場の床塗装に使用される塗料の種類
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、一般的に使用されている床塗装材のひとつで比較的安価な塗料です。
耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性、耐油性に優れ、工場、学校、病院など幅広い施設で使われています。
また、食品関連工場では水性硬質ウレタンが使用されます。
・ウレタン樹脂
ウレタン樹脂は、耐熱性、強度、耐久性に優れ、衝撃や薬品にも強い床塗料です。弾性がありクラック(ひび割れ)の発生も少なく、工場などにおける重量物の移動や作業機器の設置にも長時間耐えられるため、機械や印刷、薬品工場の他、食品関連工場でも使用されています。
・アクリル樹脂
アクリル樹脂は塗料の中で最も高価ですが、エポキシ樹脂の5倍といわれる耐久性があり、高い耐摩擦性、耐薬品性、絶縁性に加えて、美観性も優れています。
また、施工後1時間程度で硬化するため、即日使用が可能であり、工場稼働のスケジュール面でも非常にメリットがある塗料です。アクリル樹脂塗料がよく使われる施設には、機械、印刷、食品、薬品関連の工場や電子機器などを扱うクリーンルーム、病院の手術室などがあげられます。
以下の記事では工場の床塗装の種類と特徴について詳しく説明しております。
工場の床塗装の種類と特徴について。塗装を長持ちさせるポイントもご紹介
塗装(塗床)工事のメリット
それでは、工場の塗装(塗床)工事で得られるメリットをいくつかご紹介します。
メリット① 異物混入対策になる
上述したように、さまざまな製品を製造する工場では、極微細な塵でも製品の品質低下や異物混入事故の原因となります。工場の床に対して、適切なタイミングで塗装を施していれば、床面から粉塵が舞い上がることを防ぎ、日々の清掃などもしやすくなります。
つまり、工場床の塗装(塗床)工事は、異物混入対策としても非常に効果的です。
メリット② 床材の劣化を防ぐ
コンクリート床の場合、気温や水分量の変化などによって膨張・収縮を繰り返し、経年劣化によって床にひび割れなどが生じてしまいます。これが、適切なタイミングで塗装工事を行っておけば、塗料が下地の収縮に追従する役割を果たすことで、ひび割れを抑制します。
工場などでは、水や油を使用する場面が多いのですが、これらが床のひび割れから入り込んでしまうと、床の内部腐食の原因にもなり、建物自体の劣化を早めてしまうことになります。塗装工事でひび割れ対策を行うことは、床材自体の劣化を防ぐことができるというメリットが得られます。
メリット③ 施設の安全性の向上
塗装工事の必要性部分でも触れていますが、床塗装の劣化が進み、塗装剥がれやひび割れが生じると、人がつまずいて転倒したり、台車が段差で跳ねて製品が落下したりする可能性が考えられます。
工場床の塗装工事を適切に行っていれば、こういった床面の段差が生じにくくなりますので、作業現場の安全性が高くなります。また、防滑性のある塗料を使用すれば、水濡れなどがある箇所でも滑りにくくなり、従業員の転倒事故などを防ぐことができます。
メリット④ 施設内の整理整頓ができる
工場などの塗装(塗床)では、複数の色の塗料を使って色別したり、塗装(塗床)の上からラインを引いているというイメージがあると思います。これは、施設内の空間を目的に合わせて適切にゾーニングするための対策です。工場は、非常に広い面積があり、慣れるまではどこに何があって、どのような作業が行われているのかを把握することは難しい面があります。そこで、塗装(塗床)の色変更や、ラインを引くことで作業内容や製品別などに合わせてゾーニングしています。適切なゾーニングができていれば、通路にものが置かれていて台車の通行を妨げるようなことが起きなくなりますので、作業効率向上などのメリットが得られます。
さらに、適切な塗料を選んで塗装(塗床)工事をおこなえば、日々の清掃が格段に楽になるというメリットも得られます。例えば、耐水性のある塗料で塗装すれば、液体がこぼれても、床内部に浸透することが無く、シミができる心配もありませんし、拭き取るだけで清掃が完了します。
まとめ
今回は、工場における塗装(塗床)工事の必要性や、適切なタイミングで塗装(塗床)工事を行うことで得られるメリットについて解説しました。塗装工事と聞くと、外壁や屋根など、外装部分のメンテナンスで、主に施設の美観を維持するために行うものというイメージを持っている方が多いと思います。
しかし、工場の床などに施す塗装(塗床)工事は、粉塵が舞い散ることを防ぎ、微細な粉塵などによる異物混入事故を防ぐという非常に重要な目的が存在すると考えてください。さらに、適切なタイミングで床塗装工事を行っていくことは、従業員の安全性を向上させ、高い生産性を維持することができるなど、さまざまなメリットが存在します。
なお、工場床の塗装(塗床)工事は、ただ塗料を塗れば良いというものではなく、専門的な知識と経験、技術が非常に重要な難しい工事です。取り扱っている製品や原材料によって、採用すべき塗料などが変わりますし、工場の稼働に可能な限り影響を与えないように塗装メンテナンスを進めなければいけません。現在、工場床の塗装(塗床)メンテナンスをお考えであれば、お気軽に弊社までお問い合わせください。
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
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施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者