「建築確認」とは、一般的には家を建てたり、建物を建設する前に、建物や地盤が建築基準法や各市町村の条例などに適合しているかを行政の担当部門が確認することです。そして、建築確認を申し込むことを「建築確認申請」と言います。
しかし、実は新築だけでなく大規模の修繕や模様替えにあてはまる改修工事は、建築確認申請が必要となるケースがあります。
そこで当記事では、建築物の改修工事について、どのような工事であれば建築確認申請が必要になるのかを解説します。記事中には一覧で解りやすい建築確認申請の要否判定表もございます。ぜひご確認ください。
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建築確認申請とは?
建築確認申請では、建築物が敷地・構造・設備・用途に関して最低限の基準を満たしているかを審査します。この時の最低基準については、建築基準法で定められており、常に適法な状態にしておく必要があります。
ただし、建築基準法は、法の制定後、何度も改正が行われているため、新築時は適法だったものが法改正により基準を満たさなくなるケースがあります。この点については、基本的に建築時の基準に適合していれば良いことになっています。しかし、建築確認申請が必要な改修工事を行う際には、原則として全てにおいて現行の基準を満たす必要があります。
なお、建築確認申請は、軽微なリフォームの場合は不要とされ、増築工事、屋根や外壁などの主要構造部の改修工事を行う場合に必要となっています。
建築確認申請の必要性は、建築基準法第6条で以下のように定められています。
引用:(建築物の建築等に関する申請及び確認)
一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの
二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
引用:e-Gov|建築基準法
建築基準法第6条を整理すると、建築物を新築する場合は建築確認申請が必須、改修工事については、第一号~第三号までの建築物が対象と読み取れます。
第一号~第四号建築物について
建築基準法では、第一号~第四号建築物に分類されており、どの建築物に該当するのかで、建築確認申請が必要かどうか変わります。以下で、第一号~第四号建築物について、どのような分類になっているのかを簡単に解説します。
- 第一号建築物 いわゆる特殊建築物と言われるもので、用途上不特定多数の利用が考えられる施設で200㎡を超えるもの
- 第二号建築物 いわゆる大規模木造建築物のことをいいます。木造で三階建て以上か、平屋、二階建てで延べ面積500㎡を超えるもの、あるいは最高高さが13mを超えるもの、軒の高さが9mを超えるもの
- 第三号建築物 木造以外の建築物で、二階建て以上か、延べ面積が200㎡を超えるもの
- 第四号建築物 上記一号~三号以外のほか、都市計画区域や景観法等で定められた区域内における建築物
「大規模の修繕・模様替え」について
一般的には、建築物の劣化を修繕するための工事は、改修工事やリフォーム、リノベーションなどと言う用語が用いられます。
建築基準法では「建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替えをしようとする場合」と表現されていて、この場合に建築確認申請が必要とされます。
それでは「大規模の修繕・模様替え」とは、どのような工事を指しているのでしょうか?
「大規模修繕・模様替え」については、建築基準法第2条の14項、15項で以下のように定義されています。
ここでの、『主要構造部』については、建築基準法第2条の5項で以下のように定義されています。
引用:e-Gov|建築基準法
『過半』の定義については、壁や床、屋根の改修であれば、「その面積の半分以上」であればと想定できますが、柱や梁、階段は「過半」の範囲が曖昧であるため、審査機関の判断によるところがあります。
建築確認申請が必要になる改修工事の一例
建築物の改修工事で、建築確認申請が必要になる具体的な例をいくつかご紹介します。なお、建築確認申請が必要になる具体的な工事については、建築基準法において明文化されていません。そのため、自治体ごとによって判断が異なる場合もありますので、必ず自治体に事前相談を行い、確認することが大切です。
建築確認申請の要否判定表
屋根の葺き替え
4号建築物以外の建築物にて、屋根の葺き替え工事を行う場合には、建築確認申請が必要です。
なお、瓦やスレートを採用している屋根で、屋根材と防水用のルーフィングまでは構造部分とせず、このケースでの葺き替えの場合、確認申請が不要と判断されるケースもあるようです。カバー工法による屋根リフォームの場合は、古くなった屋根材を新しい屋根材で覆って修繕する方法となるので、「新しい構造部を作らない」という判断となり、大規模な修繕に当たらないと判断されるケースがあります。
外壁の改修工事
4号建築物以外において、外壁の改修を大規模に行う場合には確認申請が必要となります。
外壁の改修工事は、建築基準法上、建築物の主要構造部ですので、その改修工事は「模様替え」に該当します。したがって、建築確認申請は、「大規模か?」つまり「過半(1/2を超える)にわたり模様替えをする」かどうかでその必要性が決まります。
ただし、吹き付けの外壁をサイディングに張り替えるといった改修工事は対象になりますが、表面の外壁塗装の塗替えなどは建築確認申請が不要です。
増築
増築工事は、床面積を「10㎡以上」増やす工事の場合、その全ての工事に建築確認申請が必要です。さらに、準防火・防火地域内の建築物の場合、1㎡でも増築すれば建築確認が必要です。敷地内に延面積を増加させる工事は全て増築です。
まとめ
今回は、建築物の改修工事を行う際に必要な建築確認申請について、その基礎知識を解説しました。
4号建築物以外については、その改修工事を行う前に建築確認申請が必要になるケースが多いです。工場や倉庫などの建築物の改修工事については、基本的に建築確認申請が必要と考えておいた方が良いでしょう。
なお、「省エネ基準への適合義務化」及び「建築確認・検査や審査省略制度の対象範囲の見直し」に係る改正が、2025(令和7)年4月に施行予定となっており、現行法に存在する4号建築物が廃止され新2号・新3号建築物に分類されるようになることから、建築確認申請の取扱いも変更になる部分が生じます。こちらは、また別の機会に解説します。
参照:国土交通省「2025年4月(予定)から4号特例が変わります」
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者