会社の規模が大きくなってきて、現在の工場では手狭に感じるようになった場合、工場の増設により生産性の向上を図りたいと考えるものです。しかし、「工場を増設する!」と口で言うのは簡単ですが、工場の増設はメリットばかりでなく、デメリットや事前に把握しておくべき注意点もたくさん存在しています。
そこでこの記事では、「工場の作業スペースを拡大したい。」とお考えの企業様が、建て替えなどではなく増設を選択する場合のメリットと、あらかじめ頭に入れておきたい注意点をご紹介します。
工場増設のメリットについて
それではまず、工場を増設する場合のメリットから考えていきましょう。事業規模の拡大などを目的に、施設の作業スペースをもっと大きくしたいと考えた場合、「工場そのものを建て替える」と言うのも選択肢に入ります。ただ、増設には、建て替えにはないメリットがたくさんあるので、まずはその辺りをご紹介します。
- 工場の操業を止めなくても良い 工場増設の一つ目のメリットは、操業を止めることなく工事を進めることができるという点です。増設は、既存施設に新しい部分を付け足すという工事ですので、作業をそのまま続けている横で増設工事を行うことが可能です。これが、工場そのものを建て替えるとなると、一時的に操業を停止せざるを得ず、売り上げが大幅に下がってしまう恐れがあります。増設でも、多少生産性が落ちてしまうリスクはありますが、完全に事業を止めることなく、施設の増設が可能なのは非常に大きなメリットになるでしょう。
- 新設や建て替えよりもコストが抑えられる 二つ目のメリットは、新たな工場を新設することやまるまる建て替えることと比較すれば、大幅にコストを抑えられるという点です。もちろん、施設の築年数などによっては、中長期的に見ると建て替えした方がコストを抑えられるのに…と言うケースもありますが、短期的に見ると経営に大きな負担をかけずに生産性の向上が見込めます。
- 生産性向上や業務効率化が見込める 工場を増設すれば、当然作業スペースが広くなります。したがって、広くなったスペースを活用して生産性の向上が目指せるでしょう。さらに、工場の増設は、従業員の作業スペースを十分に確保できるようになりますので、業務効率向上も見込めます。工場の中には、生産性を確保するため、無理やり作業スペースを確保していることから、どうしても作業がしにくい現場になってしまっているケースもあります。こういった場合、増設により作業スペースに余裕ができることで「働きやすい工場」になり、従業員の満足度まで高くなるかもしれません。
このように、工場の増設にはさまざまなメリットが存在します。新設や建て替えと比較すれば、コストを抑えたうえで、操業を停止することもなく、生産性向上や業務効率化を図ることができる非常にありがたい対策だと考えられるでしょう。ただ、「何のデメリットもないのか?」と言うとそういうわけではなく、いくつか注意しておくべきデメリットがありますので、工場の増設を検討している企業様は、デメリット面もしっかりと押さえておきましょう。 以下に、工場増設のデメリット面も簡単に解説しておきます。
- 制約がある 増設と言う対策は、「今ある建物に付け加える」という形で工場を大きくする手法となります。つまり、いくら工場の理想像があったとしても、土地面積や既存建物の構造上の問題と言った制約で、「100%思い通り増設する」と言うことが難しい点がデメリットです。新設や建て替えの場合、お客様の理想通りの物を一から設計することができますが、増設の場合、「可能な限り要望に沿うように努力はする」と言った感じになることは頭に入れておきましょう。
- 通常業務に少なからず支障が出る 工場規模の拡大を『増設』と言う手段を選んで行うということは、可能な限り操業は止めたくないという意思があるからです。つまり、工事のすぐそばで、通常通り工場が稼働しているわけです。工場の増設などは、大型の建設機械なども稼働していますので、作業中はかなりの騒音が生じることになり、工事期間中は工場で働く従業員にさまざまな悪影響を与えてしまう恐れがあります。
- 外観デザインのバランスが崩れる 増設は、既存建物に新しい部分を付け加える工事ですので、もとからあった部分と新しく付け加えられた部分のデザイン性の違いから、建物デザインのバランスが悪くなってしまう恐れがあります。もちろん、新しく付け加える部分は、既存建物のデザインに沿ったものにしますが、築年数の違いからどうしても違和感がぬぐえない結果になってしまうこともあります。また、場合によっては、既存建物と同じ材質、デザインの建材が廃番になっていて手に入らないなどと言うこともありますので、工場の見た目に違和感が生じる可能性があるという点はおさえておきましょう。ちなみに、新しく付け加えた部分との接合部がどうしても弱くなってしまう点もデメリットです。
工場増設を検討した際の注意点について
ここまでの説明で、工場の増設は、メリットもデメリットも存在しますので、「増設が良いのか、建て替えが良いのか、新設して拠点を増やすのが良いのか?」は慎重に検討しなければならないことが分かっていただけたと思います。 基本的には、「工場の稼働を止めることなく、比較的コストを抑えて、生産性の向上が目指せる」と言う点が増設を選ぶ理由になるのですが、以下の注意点は頭に入れておきましょう。
法律による制限がある
工場を新設する時には、さまざまな法律の問題がついて回ります。そして、こういった法律の問題は、工場の増設時にもついて回りますので、好き勝手に増設しても良いというわけではありません。
例えば、建築基準法では、建物の建蔽(けんぺい)率や容積率、建物高さなど、さまざまな規制が設けられていて、増設を行う場合には、この規定を超えないように計画していかなければいけません。もちろん、増設を考えている工場の担当者様は、自分たちの要望を建設会社にぶつければ、それが可能な計画なのか判断してくれますので、必要以上に気にする必要はないかもしれません。しかし、増設可能な範囲が狭くなると、想定している機器の導入ができなくなるなどと言う問題が生じますので、自分たちの計画段階である程度は「可能なのか?」が判断できるよう、法律による制限について調べておくことがオススメです。
工場建設の際に関わってくる法律に関しては、以下の記事もぜひご参照ください。
参照:工場建設に必要な法律・条令や手続きについてご紹介します
新設や建て替えの方が望ましい場合もある
工場の増設は、上述したように、工場の稼働を止めることなく、比較的コストを抑えたうえで生産性の向上が見込めるという手法です。そのため、多少外観デザインなどに違和感が生じたとしても、建て替えではなく増設で対処していきたいと考える方が多いわけです。
ただ、増設にはさまざまなメリットがあるのは確かなのですが、時と場合によっては「増設ではなく建て替えを選ぶべき」と言うケースもあるので注意してください。何も考えずに増設してしまうと、災害などで古い部分が大きな被害を受けてしまい、直ぐに建て替えしなければならなくなる…などと言うリスクが生じます。以下のようなケースでは、増設ではなく建て替えを検討したほうが良いかもしれません。
- 老朽化が進んでいる工場の場合
- 既存建物とデザインを統一するとなると、想定以上にコストがかかる場合は建て替えがオススメ
- 作業動線を大幅に変更したい、作業の自動化を進めたいなど、工場の機能が大幅に変わる場合
- 会社のシンボルとなる工場だから、デザインを一新したいと考えている場合
まとめ
今回は、事業規模が大きくなって「工場が手狭だな」「作業スペースを拡大したいな」と考えた時、多くの企業が真っ先に思い浮かぶ「工場の増設」と言う対策について、そのメリットや注意点をご紹介してきました。
増設は、工場の稼働を止めることなく工事が進められるという点が大きなメリットで、経営上の負担も少なく、生産性の向上や作業効率の向上を目指せる非常に有用な対策になります。ただ、敷地面積の問題や既存建物の劣化度などによっては、増設ではなく建て替えの方が望ましいケースも普通に考えられる点は注意しておいた方が良いでしょう。
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1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任
改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。
施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者